ブルーバナナ アパートメント BLUE BANANA apartment インタビュー

お店の前を通るたびに気になっていた『BLUE BANANA apartment』さん。通りから見るとオシャレな小物のショップという感じですが、「BANANA」と「apartment」という言葉の組み合わせも気になっていました。そこで、取材依頼をしたところ、代表の宮田卓弥さんは快く引き受けてくださいました。


お店を立ち上げたのはいつごろで、なぜ蔵前という地を選んだのですか?

お店は、昨年(2018年)の12月20日にオープンしました。
物件選びの時に実際いろいろ歩いてみて、蔵前の「空気感」がすごく良かったんですね。のんびりしてると言うか、ゆったりしてるとう言うか。それが平日も、土日もそんなに差がなくて。そんな空気感がすごく気に入りましたね。お取引先さんが近いというのももちろんあるんですけど、ここで事業を始めたいなと思ったんです。

宮田さん自身は今、どこにお住まいですか?また、経歴を教えていただいてもいいですか?

今の住まいは千葉県の市川市です。もともとは群馬県の前橋出身なんですが、ずっと大学まで群馬県を出たことがなくて…。大学は地元の公立大学で、経営学を学んでました。なので就職した後も、いつか自分で商売を始められたらなあと考えていましたね。

子供のころはサッカーをやったりして、活発な子供だったと思います。一応、サッカーを小中高までやっていました。ポジションは今で言うミッドフィルダーですね。僕らの時代はハーフって言っていましたけれど(笑)。なので、あんまり自分で点を取るというよりは、きわどいところにパスを出したり、取ったボールをもう一回つなぐのが好きでしたね。大きな大会には出ていないですが、小学校のクラブチームの時が一番成績が良くて、県で上位入賞したこともありました。

社会人になって就職されたわけですが…。

僕は就職先も小売業で、ファッション雑貨のSPA(企画、製造、小売までを一貫して行う)をしている会社に15年間いたんですけど、やっぱり物を作って販売するところまで全部自分でやりたいなというのはあったので、企画デザインから製品づくり、販売までをトータルに手掛けたいと思っていました。

その当時、入社した会社が本格的に全国展開を始めた時期だったんで、販売スタッフから入って、1年で5か所くらい異動するほど出店が加速していました。気づいたら福岡とか、結構いろんなところに住んで、本部スタッフになってからはレディースバッグの事業部に移り、東京に落ち着いた感じです。

いろんなことをやらせてくれる会社だったので、まずお店のスタッフとしてお客様とのコミュニケーションや、おもてなしの基本的なことを学びました。

その後、物をつくる一連の工程、デザインから販売するところまで、どういう風に考えながら物を作って行くかというのをじっくり学びましたね。

生産管理の仕事をやっていた時期もあって、中国やインドに出張に行って工場側とやりとりをするなど、そういうところは今でもいろいろ役立っていますね。

前職ではそんなにデザインには携わらなかったんですが、お店のコンセプトづくりとか、そういったところも常に考えていたことだったんで、今はスタッフと一緒にグラフィックを描いたりしています。デザインは現場でいろいろなことをやりながら学んでいった感じです。

『ブルーバナナアパートメント』のネーミングの由来を教えてください。
お店の前を通った時に、すごく印象に残って気になっていたんです…。

なぜ「ブルーバナナ」なのかというと言うと、屋号が『ブルーバナナアパートメント』で、自分たちの商品のブランドとして「ブルーバナナ」、そして店舗名が「ブルーバナナスタンド」です。

もともとレディースのバッグを作り続けてきたんですけど、「あまり年齢とか性別とか囚われないで、みんなが楽しめるものにしたいな」と思ったんですね。

で、アイコンを何にしようかなと考えた時に、親しみがあるけども、どこかユニークさもある何かがいいなと思ったんです。それで、バナナがいいんじゃないかと…。けっこう単純なんですよ。で、バナナをアイコンとしたものを手作りしたいなと。

前職で15年間同じ会社でやって来た中で、いつまでたっても自分は未熟だなと思ったんです。その時に、じゃあ、まだまだ未完成な熟していないバナナという意味で、「ブルーバナナ」って付けたんですね。いつまででも成長していけるというか、自分はつねに新しいものにチャレンジしているという、まだまだ未熟さというものを大事にしていって、視点を変えると、もっともっと面白いものが出来るんじゃないかなという意味を込めて「ブルーバナナ」というコンセプトにしました。これからの人たちが集まりながら、ワイワイできるような事業体にしていきたいなと思って。

かなり小さいけれど、みんなの顔が見えて、お隣さん同士がわかるような「アパートメント」という言葉を付けて、屋号にしました。

いろいろな人が集まる場所にしたいということで、「アパートメント」と付けたのですね。
「アパートメント」って見た時に、ここは今流行りのシェアハウスなのかなって思ったりもしましたけど…(笑)。

僕もいろんな方に名刺を配っているんですが、不動産屋さんかなとか、シェアハウス的なものとか、そういう風に思われることもありましたね。

ところで、お店のコンセプトは何ですか?

お店は「ブルーバナナスタンド」、コンセプトは「いつかどこかの売店」です。売店なので、誰でも気軽にお買い物ができる。昔のタバコ屋さんのカウンターみたいな感じでレジカウンターを作ったりとか、商品も駄菓子のケースに入れてみたりとか、自分もスタッフもいつもエプロンを着用したりとか。それらも売店のコンセプトに沿ったものです。

何人で運営していますか?

僕も含めて2人でやっています。この狭さなので、販売員とお客さんという関係性だと気軽に来ていただけないので、もっとフランクな関係性を目指しています。世間話のついでに買っていただくというような…。

地元の職人さんの技をモノづくりに活かしているようにお見受けしますが、特にこだわっている点などありますか?

ものづくりへのこだわり「地産地消」

もともとバッグを作っていた時に、ミシンを使わずにできる方法はないのかなと考えていたら、ウェルダー加工という、ビニールとビニールをくっつけるやり方に出会ったんです。

いろいろ調べて行くと、東京にそうした工場があることが分かった。

でも、高齢の方で廃業したりという話を資材屋さんで聞いたりしていく中で、実際に工場に何度か通わせていただいて、「こういうことやりたいんです」という話をしたら、快く引き受けてくださって…。

ビニールとビニールをくっつける仕組みを教えてください。

熱ではなくて、高周波を当てるらしいです。溶着って言って、分子レベルで内部から発熱してくっつけるみたいな感じなんです。すごくでっかい機械なんですよ。ちょっとした設定で、うまくくっついたり、くっつかなかったりする。下手すると火花がでてスパークしたりとかもあるみたいで、大変な作業だなと感じました。

ボタンに関しても浅草の会社さんにお願いしているんですけど、プラスチックでボタンを成型しているんですよ。どうしてもバナナのボタンを作りたくて…。色も僕たちがイメージしている色はちょっとくすんでいる、レトロ感のある色味で展開しているので、それも出したくて、まず形と色味と、このバナナの彫刻をお願いしたんですね。実際、半年くらいかかったんですけど、本当に丁寧に対応してくださって。

素材も三筋の会社さんのビニールを使っているんですけど、こちらも、どういったビニール素材があるのかなとリサーチしていくなかで出会って。すごい色味が綺麗だったんで、これで製品化したいと社長さんに話したところ、最初サンプルから買わせていただいて、自分たちのやりたいことをお話したら、ご協力してくださいました。

このバッグの色はオリジナルですか?

いえ、既存の色味です。でも、ものすごくいろんな色があって…。

前職ではバッグも中国で大量に作っていたんですが、もうちょっと自分たちでやるときには、顔が見えたりとか、人柄がわかったりとか、距離の近いところで物が作れたらと思ったんで、ちょうど今たまたま自転車で行ける距離ですべてが揃うというのは嬉しいですね。

「いらっしゃいませ」ではなく、
「こんにちは」から始まるお客様とのつながり。

店頭にてスタッフと

接客で特に気を付けていることはありますか?

接客は距離感みたいなとこが大切ですね。初めて蔵前に来た方にも地元の人が来たみたいな感じで接したいなということはスタッフとよく話し合っています。

なので、「いらっしゃいませ」っていう言葉はほんとに似合わないなと感じているので使わない。「こんにちは」ってご挨拶をしています。

お店の展示の仕方などはご自分で工夫されたのですか?

もとはガレージと言うか、倉庫みたいな使われ方だったみたいで、シャッターが閉まっていました。トイレも水道も何もなくて。

この場所をどうしようかという所から、できることは自分たちでやりました。展示スペースの裏側をみていただくと分かると思うんですが、舞台の裏側みたいな感じになっていて…。

どのようなお客さんが見えますか?

比率としては女性の方が多いですけど、だいたい1日20人くらいのお客様がいらっしゃいます。男性の方も買ってくださることも多くて…。

最初に言っていたように、「みんなが楽しめる」というところでは良い反応をいただけてるかなと思いますね。

アクセサリーも作っているんですか?

そうですね。アクセサリーもハンドメイドで作っています。バッグと同じ生地を使ったもので作っていますね。

色味がすごく気に入ったビンテージパーツが見つかったので、それを組み合わせてというのも展開しています。

商品ラインナップとしてはどんなものがありますか?

ショップコンセプトが「売店」なので、ポストカードも全部自前のシルクスクリーンで刷ったものを売っていますね。

グラフィックデザインも手がけているので、そのグラフィックを生かしたTシャツとか、スウェットとか、あとは既製品にプリントした物とかも売っています。

ネーミングが「バナナ」なので、今、お客様に「バナナは、おやつ派?朝食派?」というアンケートを取っているんですが、アンケートを取るだけじゃなくて、Tシャツや靴下など「おやつ朝食グッズ」も作っています。

来てくださった方がいつも「ココって何かいつもふざけたことやってるよね」とか「面白いことやってるよね」っていう印象を持っていただけるように、つねにニュースは発信していこうと思っていますね。

先ほどサッカーをやっていたとおっしゃっていましたが、今も何かスポーツはされていますか?

今は全然できていないですね。ジムに通っていた時期もあったんですけど、最近はちょっと行けてないんで。何か蔵前でサッカーチームとかできたらいいんですけどね(笑)。

うちにもフットサルをやっていたり、サッカーが得意なスタッフがいますよ。
子どもがやっていて、審判の資格を取ったスタッフもいます。

あ、ほんとうですか!?

いま『コフィノワ』さん繋がりでボウリングやカラオケに行こうみたいになっていて。それもほんとノリなんですよね。

「蔵前フットサルチーム」とかあるといいですよね。他に趣味はありますか?

これからちゃんとやりたいと思っているのは写真ですかね。今、お店とか商品はよく撮るんですけど、対象をもっと広げて風景撮ったり、ポートレート撮ったりとかしたいなーと思っています。

この場所でギャラリーをやっても面白いかもしれません。イベントも出来そうですね。

ホントそうですね。壁の上のスペースは空いているから…。

今度、近所でお店兼事務所を構えられるお客さまがいて、芸大生のお家に眠っている作品をサブスクリプション(定額制レンタル)で提供するっていうサービスを既に始めているんです。

うちも、ちょっとやらせてもらおうかなと思っていますね。今どの絵にしようかなと考え中です(先日、納品されました)。

若い人の中には、ほとんどサブスクリプションを利用して暮らしているような人もいますね。

僕はこのお店の強みって、人が出入りしやすいことだろうなって思っています。ほんとにいろんな方と知り合う機会が増えました。

今の20代前半の若い人たちは、自分が20代前半だった時には考えられないようなことをやろうとしている。たぶん、それはテクノロジーの進化も影響していると思うんですけど、僕もそういうことを少しでも応援したり、一緒に楽しめたらいいなと思っています。

今、若い人たちがどんどん蔵前に事務所を構えている中で、蔵前がもっと活性化していくために一緒にやれることを探して、検討しているところですね。

今、蔵前にはどんどん新しい店ができてますね。

そうですね。僕たちも新しい方に入りますね。もう一本向こうの路地にある『WEEKENDER SHOP』さんは、オープンして2年になりますけど、オーナーの芹澤さんとはよくお話ししますね。

実は、私の娘と美大で一緒だった友人がアクセサリー作家で、そこに商品を卸しているんです。

アクリルのちょっと大ぶりのアクセサリーですね。この前お会いしましたその方。コンセントさんに勤めていますよね。

ふざけている感じと、真面目にやっている感じの
両方あるのが「ブルーバナナ」

蔵前でお店を始めて心境とか変わったことはありますか?

やっぱり、お店はいいなと思いますね。

本当にいろんなことが起こる。もともとお店を開くか、ネット販売だけにしようかとかいろいろ事業プラン練っていたんですよ。蔵前の街に来て、あぁここの場所でお店をやっぱやりたいなって思ったんですよね。

あの時にEC(ネットショップ)事業だけでやってたらこんなにたくさんの人に出会うことはなかったんだなと思います。なので、お店のパワーというか、「お店ってやっぱすごいな」っていうのを再確認した感じですね。

ECだけじゃ全然伝わらないことってあると思いますし、やっぱり人と人が直接コミュニケーションが取れたり、現物があるっていうのは強みなんじゃないかと。

そうですね。触れる。話せる。

ECもやっていますか?

ECもやっていて、ちょっとずつ「いいね!」もらったりしてますね。

温度感が伝わるのもやっぱり、お客様。特に蔵前の方はそうかもしれないです。蔵前を訪れる方も含めてほんとに温度感で商売をしているって感じですね。

「温度感で商売」ってなんだかいいですね、そのフレーズ。

皆さんそうじゃないですか。何かすごくそう思うんですよね。

宮田さんのお薦めの蔵前のお店をお聞きしたいのですが。

僕は、お酒がすごく好きなんです。ほんとに気軽に立ち寄ってサッて飲んでっていう…。

角打ちカフェ』さんって知っていますか?もともと『酒のフタバ』っていう角打ち(その場で飲める)の酒屋さんだったんですけど、最近大幅に改装したんですよ。お店の中は広いんで、最初は立ち飲みだったんですけど、今では座れるようになってて…。

へぇ、いいですね。ちょっと覗いてみようかな。4丁目の方じゃないですか?

和菓子の『榮久堂』さんを左に曲がったところにある酒屋さんですね。

『榮久堂』さんが蔵前だから…。

ギリギリ蔵前ですかね。じゃあ大丈夫ですね。三筋の方に渡らないので…。

あそこがギリギリ蔵前。あぁ良い話聞いた!

あと寿になっちゃうんですけど。『ひととなり』さんっていう立ち飲み屋さん。そこで隣になった地域の住人の方に、オーナーの田村さんが「宮田さんとこ、こういうのやってるんですよ」みたいに言ってくれたりして。その方がウチに来てくださって、そこから人脈が広がるみたいなこともある。

人の繋がりの部分で、蔵前近隣は「面白いな」「良い街だな」と思ってます。

飲みニケーション大事ですからね。お酒を飲むと少しくつろいで普段話せないこと話せたりとか、人見知りでも話せたりとか…。

飲みニケーション大事ですかね。最近、皆さんあまりお酒飲まないということもあるんですけど、僕はやっぱりお酒は好きですね。勝手に友だちになっちゃうみたいな…。

最後にひとことお願いします

ブルーバナナはまだ熟れていない青いバナナっていうことで、未完成とか未熟とか、そういったことも視点を変えると楽しいねっていう考えです。

デザインのコンセプトとして「気づくと楽しい」っていうのがあって、衣類などの「洗濯表示」をバナナで解釈してやると、冷蔵庫に入れちゃダメとか、たまにはバナナも休ませてあげてねっていうメッセージを込めたり。

あと、『コフィノワ』さんがグッズを作られるという時にお手伝いをさせていただいたんですが、エイプリルフールの時に「ロゴが変わりました」みたいなことをやりたいという話があって、それでブルーバナナとコラボしたロゴを作って看板にして、インスタグラムで投稿してくださったり…。

この珈琲も『コフィノワ』さんとのコラボ商品として作ったんですけど、カップにウチのバナナが潜んでいる。コーヒーっていろんな豆をブレンドして味を出すと思うんですけど、僕らもブルーバナナと『コフィノワ』さんをブレンドして出来た物という意味を込めて、「蔵前3丁目ブレンド」という風に形にしたわけです。

またこれは、母の日に向けて作ったもので、鏡に映ると「ありがとう」がちゃんと出るんですけど、なかなか素直になれないよねっていう気持ちの裏返しみたいなイメージ。このままだとちょっとわからない。

こういった視点を変えたりだとか、気付くと面白いという物をデザイン要素に入れて商品づくりをしていますね。

一見ふざけている感じと、ちゃんと真面目にやっている感じの両方あるのが「ブルーバナナ」というブランドなんです。


「ブルーバナナ」というコンセプトは、未熟、未完成だけれど可能性は無限大という、若い人たちともシンクロして、蔵前から新しいムーブメントを生み出す原動力になるかもしれないなと感じました。

それに「アパートメント」という言葉には、誰でも集まってワイワイやれる楽しさ、お隣さん同士がフランクに付き合える場所というイメージがあり、ここから様々な人のつながりが出来て、どんどんコラボ商品やイベントが発信されていくかもしれません。

 

BLUE BANANA apartment

住所: 〒111-0051東京都台東区蔵前3-19-8 シンエイマンション第二蔵前102号
電話: 03-5846-9285
営業時間: 13時~19時(平日) 11時~18時(土日祝) 木曜休
事業内容:オリジナル雑貨ブランドブルーバナナの企画、製造、販売
直営店舗ブルーバナナスタンドの運営
各種オリジナルグッズ製作
https://blueba7.com/
@bluebanana_stand

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