コフィノワ COFFEE NOVA スペシャルインタビュー【前編】

こんにちは。はじめまして!『蔵前うしろまえ』です。
わたしたちは「表も裏もうしろもまえもない、蔵前そのものが持つ本当の魅力」を発信するWebマガジンです。2018年10月にサイトオープンのはこびとなりました。

記念すべき第一弾として、コーヒーショップ「コフィノワ」さんに登場していただきました。
オーナー高橋さんの、なんと2時間超えのロングインタビュー! コーヒーとの出会いから、コーヒーに対する熱い想いを存分に語っていただきました。
特集として、前編「コフィノワ オープンへの道のり」後編「スペシャルティコーヒーの魅力」の2回に分けてご紹介します。
コフィノワさんファンのみならず、コーヒー好きには必見のスペシャルインタビューです。
コーヒーに興味の無い方も、これを読めばコフィノワのコーヒーが飲みたくなるはず…!?


コフィノワ オープンへの道のり

コフィノワ オーナー 高橋 史郎さん

コーヒーとの最初の出会いはいつですか?

高校生の時ですね。当時、昔ながらの純喫茶があって、サイフォンで淹れるのが主流だったんです。友だちと高校の帰りに喫茶店寄って飲んだり、あとはデートの際に寄ったり…。結構苦みのある深煎りのコーヒー、マンデリンなんかを飲んでいたんですね。

ご出身はどちらですか?

武蔵小杉の隣にある武蔵中原という川崎市の出身です。自宅で飲むコーヒーは、母が淹れるインスタントコーヒーに牛乳やクリープなんか入れて飲んでいた記憶があります。

高校生の頃は部活動などはやっていましたか?

音楽活動をやってました。エレキギターですね。今でもたまにお店にアコースティックギターを持ってきて、演奏することがあります。
ジャンルはハードロックが流行っていたので好きでした。20代半ば過ぎぐらいからは、ジャズとかフュージョンを聴くようになりましたね。なのに、自分で演奏するのはハードロック寄りの音楽でした。
ちょうど洋楽を聴き始めた中学1年の頃に、熱狂的に好きだったバンド、ヴァン・ヘイレンの「1984」っていうすごく有名なアルバムが出て。ヘヴィメタルが流行った時期でよく聴いていました。

コーヒーと出会った高校生の頃から、今のコフィノワにつながるきっかけはありますか?

20代後半に、父が経営していた焼肉屋で働いていたんです。
近所に卸のコーヒー店があって、そこの社長がよくうちのお店を利用してくれていたんです。そこの豆を使って、新しく始めるランチにコーヒーも付けて出すことになりました。
ある日、父が「お前、コーヒーが好きだったよな?将来的にコーヒーショップをやってみればどうだ?」と。隣で話を聞いていたコーヒー店の社長が、工場見学をさせてくれたんです。
社長にコーヒーショップの現状を聞いたところ「難しいよ。…だけど、そうでもないよ」って。誰でも始められるけど、その分潰れていっている。よっぽど勉強してからやらないと、付け焼刃でできる仕事ではないんだと思いました。
どうしようかと悩んでいたとき、タイミングよく、そのコーヒー店の従業員の方が一人辞めたんです。
「そう言えばコーヒー屋やりたがっていたよね?ウチで勉強できるポストが空いたんだけど、来月から来れない?」「勉強できるんだったら、お願いしたいです!」
そんな出会いがなければコーヒー屋にならなかったと思います。

コーヒー店に入社してから、コーヒーを深く意識し始めたという感じですか?

そうですね。ほぼほぼド素人でしたから。たとえば、なぜ「モカ」って名前なのかも知らなかったんです。

なぜ「モカ」なのでしょうか?

エチオピアのソマリア半島と、紅海を挟んで隣接している中東のイエメンに、モカ港っていう港があるんです。そこを拠点として輸出しているコーヒーのことを「モカ」と呼んでいるんです。
港の名前が由来なんですけど、生産国のエチオピアの方が有名だから、両方の名で呼ばれています。
ブラジルは、ブラジルとして通っていますが、サントスってありすよね。あれもサントス港から出るので、そう呼ばれているんです。タンザニアはキリマンジャロですが、これはタンザニアにあるアフリカ最高峰の山であるキリマンジャロからついた通称なんです。ジャマイカはブルーマウンテン。ジャマイカとは言わず、ブルーマウンテンと呼ぶのは、地名を取ってコーヒーの名前にしているという理由があります。
こうした知識は、すべてコーヒー店に入ってから勉強したんです。知れば知るほど、もっと知りたいなと思うようになりました。

10種類の豆は、フレンチプレスでのテイスティングができます

そのコーヒー店は何年ぐらいお勤めになったんですか?

13年ぐらいですね。最初の仕事はデリバリーでした。運転手をしながら卸先に「おはようございま~す!」「また、お願いします!」と言ってコーヒーをデリバリーする。朝は早かったですね。7時前に行ってました。週に1回だけ始発で出なきゃいけない。それを1年半ぐらいやっていたんです。
自分が目指していた「焙煎」という部門はメーカーとしての中心部なんですけど、それをやりたいな、と思っていたら、急に欠員が出て…(笑)
勉強はしていたのですが、急に「来週からお前やれよ!」という事になりました。それから12年近く焙煎に携わっていました。
当時の従業員は8人ぐらいだったんです。この規模だった当時でなければ、入社して「焙煎」という心臓部に行く期間が短かすぎますね。
人手が足りなかったので、事務的なことも営業もいろんなことをしました。
家庭用のコーヒーを作ろうということになりまして、店舗数の多い大手のスーパーや生協など向けにコーヒーを作って、月間40トン近く売っていました。

コーヒーを基点にして輪を作りたい

コーヒー店をお辞めになって、自分のお店を持とうと計画されたのはいつ頃からですか?

40代半ばに差し掛かった時に、「どうしようかな」って思ったんです。十分すぎる程のお給料をもらえていて、待遇的には全く不満はなかったんですけど、自分が「コーヒー屋になろう」というきっかけはこっちじゃないなと思って。
「これだけやったのだから試す価値はあるのかな」と思って、社長に伝えたところ「もともとコーヒーショップをやりたがっていたよね」と覚えてくれていました。
今まで社内で、退職してコーヒー屋を始めた人は居なかったんです。辞める時は後押しをしてくれましたね。それで「やろう!」と。
場所は、色々探して調布や仙川まで見に行って、不動産屋さんに「ここでやるなら移り住まないと無理だよ。通勤に往復3時間も取られたらいつ寝るの?」と言われてしまいました。通勤時間は30分まで(新宿あたりまで)、大江戸線をベースに探したのですがなかなか見つからなくて…

コフィノワさんをオープンする以前に、蔵前にお住まいだったんですか?

そうですね。住み始めて13年目ですかね。結婚して、蔵前に住み始めたんです。家内の実家がおもちゃ屋なんです。探してもなかなか良い場所が見つからないから、近場で早く始めたい気持ちもあって、そこに間借りしてやりたいなって考えたこともありましたね。

場所が決まるまで、どうされていたのですか?

店内ではコーヒーグッズも販売しています

普通は、会社に残っている間に物件を押さえて、1ヶ月後くらいに開店という流れなんですけど、退職した3月末から翌年の8月までの17ヶ月は場所を探しながらバイトをしていたんです。
前職では焙煎はしていたんですが、カフェで働く事は未経験だったんです。コフィノワのスタッフの加藤さんが、浅草のクローバーカフェ(現在お店はありません)の若き店長だったんです。そこで働かせて欲しいと頼んだところ「いいですよ」ということで、面接も無しに「いつから来れますか?」と即決でした。
そこで7ヶ月間働いていたのですが、今でも加藤さんの呼び名は「店長」のままです(笑)
うちの本当の「店長」だと思っているお客様もいらっしゃいます。彼は9月で退社して、オーストラリアのメルボルンにコーヒー留学に行くんです。2年行くつもりだと言ってました。ひょっとすると、一ヶ月でヘこたれて帰ってくるかもしれない(笑)
オーストラリアのメルボルンは、日本よりもコーヒー文化が進んでいて、イタリアの移民が多いんです。イタリアといえばエスプレッソコーヒーですね。
日本人のコーヒー留学先としてはとてもメジャーで、最初のステップとしては選びやすい留学先です。コーヒー留学の日本人は、語学は苦手だけれども勤勉だという方が多いので、受け入れられやすいようです。

先日はお店でギターのライブがありましたね。今後お店でのライブの予定はありますか?

今後もライブはやっていこうとは思っています。
ただ、お店の名前の由来なんですが、コフィノワとは、コーヒーを基点にして輪を作りたいという願いを込めています。先日ライブをしてくれたギタリストの山崎岳一さんは、もともとうちのお客様です。うちのお客様だからライブをして頂いている。ただのライブ会場として使うのであれば、どんなに有名な方だとしてもお断りしているんです。
あくまで基点がコーヒーであって、音楽ではないというのが僕の中のポリシーです。
もちろん、お客さまがフライヤーを置いて欲しいという事であれば棚に置いています。

「コフィノワ」が基点であり、ここを基に輪を広げていきたいという事ですね。そういえば、ライブのチャージ料金も無料ですね。

一律のチャージ料を取った方が聞きやすいというお客様もいらっしゃるかもしれないですけど、ライブ目的ではなく、ただ純粋にコーヒーを飲みに来たお客様に負担をかけないようにチャージはいただきません。ただ、聞いていただいたついでに、幾らでも…100円でも構わないんです。入れていただけたらいいな、それくらいの気持ちでやっています。
ミュージシャンの方も快く賛同してくださっています。

店内スペースのこだわりはありますか?

高橋さんの好きな花である、ひまわりの絵が飾られています

他のカフェと比べると違いが良くわかるとおもうのですけれど、パーソナルスペースが広いんです。通常ですと45cm四方くらいなのですが、うちは90cm四方にしているんです。
ギチギチにキャパを増やして…というイメージが全く無いんです。
小さなパーソナルスペースのチェーン店などのコーヒーショップもありますが、そういうのとは違うかな、と思います。
ただ、そちらを利用するお客様がうちに来ないかというと違くて、使い方が違うんですね。煙草を1本吸ってコーヒーを飲んで仕事に戻らなきゃ、という場合。TPOに合わせて当店をご利用いただくこともある。
うちではゆっくり語らいを楽しむ、そういう時間の使い方をしてもらえれば。

 

最近、カウンターに置いてあるお菓子の種類が変わりましたね。

今は作っていないオリジナルどら焼き

先日まで、岡埜栄泉総本家さんのオリジナルどら焼きを置いていました。
ある女性のお客様がご来店された際、たまたまお話しする機会があったんです。アイスラテを飲まれていたんですが「ものすごく美味しい」とおっしゃってくださって。
平日だったので変則的な勤務のご職業かと思っていたところ「私も食に関する仕事をしているんです。岡埜栄泉総本家で工場長をしています」と。
また一週間後にいらっしゃいまして、その際に「名入れでどら焼きとか作れたりしません…よね?」ちらっと言ってみたんです。作って欲しいな~と思って(笑)コーヒーとどら焼きって結構合うんです。
すると後日、サンプルを作って持ってきてくださいました。味をみて、餡子もやわらかいしそこまで甘ったるくもなく「あ、いいな」と思いました。
それが小さめのどら焼きで「どら焼きが先に無くなってからコーヒーで〆る」というのが良いんじゃないかと。こちらが決めたというより、向こうから提案してくれました。どら焼きもコーヒー一杯からつながったお菓子ということですね。

コフィノワオリジナルどら焼きは、サイズ感がピッタリで上品な味で美味しかったです。もう食べられないのは本当に残念です…

岡埜栄泉総本家さんは明治時代より145年続いているんですが、上野のお店を畳んでしてしまったんです。
餡は北海道小豆を使っていて、あのサイズ感であれほどの品質のどら焼きはなかなかないと思います。だから替わりを探すという選択肢はなかったですね。人気があったので、ちょっと悲しいな…という気持ちがあります。
ただ今後、コーヒーの繋がりで何か新しい出会いがあるかもしれません。
実は今年の頭から、松が谷のお菓子屋さん(パティスリー ブレロさん)がうちにコーヒーを飲みに来ていて「実は今度カフェをやるんですが、コーヒー豆ってこちらで買えますか」と。
最初はコーヒー豆の卸だけだったんです。以前は、同じ蔵前のパンとお菓子屋さんのル・カトルさんのお菓子を置いていたのですが、閉店されて(ファンに惜しまれながら2018年8月に閉店)どうしようかなぁ…と思っていたところ、あ、そうだ!と閃いて。パティスリー ブレロさんのお菓子を分けて貰えることになりました。

パティスリー ブレロさんの焼き菓子

新しいコーヒーの輪が繋がっていきますね。ところで、お気に入りのコーヒーショップはありますか?

ありますけど…言わないです!(笑)
味に関しては「さすがだな」という味です。Qグレーダーの資格試験を一緒に受けた方なんです(「Qグレーダー」とはコーヒー鑑定士の世界標準規格である超難関資格です)。
ヒントを言うと、東京で一番大きい商店街(武蔵小山商店街)のカフェです。オーナーはうちにも数回来店されています。

来店されたときは、いつもよりも力が入ってしまったのでは?

常に緊張感を持っているので、いつもと同じです。
お金を出して飲んで下さるお客様はシビアですから、そちらの方が緊張します。例えば、一口飲んだだけで帰られたお客様が居たとしたら「こちらの味の説明が悪かったのかな…イメージが伝わらなかったんだろうか…」と原因を考えます。

高橋さんのQグレーダーのライセンス証

コフィノワさんはアットホームで居心地が良い、と言うお客さまが多いですね。
コーヒーはもちろん、ゆっくりと寛いだりおしゃべりを楽しむ場としてみなさん利用されています。
お洒落なのに、下町情緒あふれるリラックスできるお店ですね。

そう感じて頂けると嬉しいですね。


インタビューの最中にも、道を行きかう地元の方たちからご挨拶されたり、常連の方々が気さくに話しかけていらっしゃったり、心がほわっとあたたかくなる…コフィノワさんはそんなコーヒーショップです。
次回、後編「スペシャルティコーヒーの魅力」では、焙煎の秘密やスペシャルティコーヒーのお話をして下さいます。ぜひご期待ください!

ご近所にお住いの常連のマダムがお話に花を咲かせていました。

 

コフィノワ COFFEE NOVA

住所: 東京都台東区蔵前3-20-5
営業時間:[月火水金]8:30~18:00  [土日祝]11:00~18:00
電話: 03-5823-4445

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