角打ちカフェ・フタバ インタビュー

今回登場するのは、先日取材した『ブルーバナナアパートメント』代表の宮田卓弥さんお気に入りの飲み屋ということでご紹介いただきました『角打ちカフェ・フタバ』さん。

「角打ち」と言えば、酒屋さんの店内で立ち飲みできるスタイルのことを言いますが、フタバさんは最近になって座って飲めるようにリニューアルしました。
角打ちという言葉の持つイメージが変わるほど、オシャレになったお店を訪ねて、専務の関 明泰さんにインタビューしました。


お酒はコミュニケーションツール。
だから、気軽に出向いていろんな話ができる
コミュニティの場をつくりたい。

お酒屋さんとしてスタートしたのは、いつですか?

会社は昭和19年に開業したのですが、缶詰の卸業やサイダー工場などいろいろ経営している中、蔵前で酒屋としてスタートしました。

昭和19年と言えば、まだ戦時中で空襲があった時期ですね。大変な時期に創業されたのですね。

そうですね。ですからお店自体は移動したりしてましたね。

角打ちというスタイルを始めたのはいつ頃からですか?

昔は酒屋で飲む人がけっこういたんです。いつから始めたと言われるとちょっと難しいですね。立飲みスタイルにしたのは、平成22年からですね。

今まで立ち飲みスタイルだったものを着席スタイルにしたのは何か意図があるのですか?

やはり、町のコミュニティを作りたいなと思って…。やはり座りながら「会」のようなものが出来ればと思ったもので。「会」って、「何月何日に集まりましょう」ではなくて、気軽にそこに出向いて、町の話が出来ればいいなという思いで。

お酒というのは、コミュニケーションツールだと思うので、それをうまく生かしていきたいですね。

お店ではイベントもやっていらっしゃるのですね

岩手の酒蔵「あさ開」の試飲会

月一でやっていますね。6月1日、2日の土日には岩手の『あさ開(あさびらき)』さんという酒蔵を招いて試飲会をやりました。ウチは酒屋ですけど、実はコーヒーも扱っていて、『NAGASAWA COFFEE』という岩手のコーヒーの焙煎屋さんに頼んで送ってもらっているんです。結構有名な方で、「コーヒーで人を幸せにする20人」に選ばれた方なんです。なので、岩手つながりで試飲会をやってみようかなと思って。

毎回、酒造メーカーさんを変えて試飲会をやっているんですね。どれくらい人が集まるんですか?

ブログフェイスブックツイッターなどのSNSを見ていただいているせいか、地元の方から遠方の方まで、20~30人は集まりますかね。

扱っているのお酒の種類はどんなものがありますか?

日本酒だけじゃなくビールもワインも焼酎も扱っています。銘柄も豊富になりました。

ビールは、地元(浅草)はアサヒさんなんですけど、サッポロさん、キリンさん、サントリーさん全部と仲良くさせていただいています。オリオンビールも沖縄から直接取り寄せています。海外のビールもほんの少し扱っていますが、ウチの酒屋のコンセプトとしては、「日本産のいいお酒を紹介していきたい」なんです。

日本酒だったり、日本のワインだったり、焼酎だったり。それに日本のクラフトビール、地ビールを中心にやっていこうと思っています。

最近になって、地元でも「クラフトビール始めました」という所はありますね。きっかけがあればお付き合いしていきたいと思っています。

冷蔵の棚には様々なビールや日本酒の銘柄が並ぶ

酒蔵さんとのお付き合いはいかがですか? ご自分で開拓なさっているんですか?

酒蔵さんを訪問したり、向こうからやって来てくださったり…。いい関係を築いていますね。でも、種類を増やせばいいってものではなく、自分が伝えるべき酒蔵が造ったお酒を取り扱っていきたいと思っています。

角打ちフタバさんは、口コミの評判がとても良いですね。いろんなお酒が飲めて、しかもリーズナブルで安い!

おかげ様で。お客さんがそういう風に評価してくれるというのは有り難いなとは思っています。

いろんな方にいろんなお酒を知ってもらいたいという思いがあって低価格で提供しています。日本酒ってどこか敬遠される傾向があって、悪酔いするとか、美味しくないとか……そういう部分をちょっと変えていきたいなと思ってリーズナブルな価格設定にしているんです。

1,080円(センベロセット)で安く飲めるということで、お店に来てもらって、実際味わって「あ、これ、美味しかったね」とか「これ買って帰って誰かと一緒に飲みたいね」とか、そんな気持ちになってもらいたいので、安く飲んでもらうというよりは、いろんなお酒を楽しんでもらいたいなという気持ちでやっています。

センベロセットのほかに、自分で銘柄を指定できるセットメニューもあるんですね。

プラチナセンベロセット

やはり、どうしても「これが飲みたい」という要望がでてきますので。

500円余計に払っていただければ(プラチナセンベロセット)、お好みのお酒が飲めるというシステムにしたんです。お酒好きの方にとっては、かなりリーズナブルに飲めるということですね。

日本酒と赤ワイン、白ワインと別々なものをオーダーしてもOKという、懐の深さみたいなものを感じますね。しかも、昼からも飲めるという…

日本酒だけでなく、ワインや焼酎も含めて日本のお酒を多くの人に知ってもらいたいなと思ってこういうシステムにしています。

センベロセットだけは午後5時からで、それまでは単品でご注文いただくようにしています。

関さんは、お酒に関しての勉強会などには参加されていますか?

僕は今、東京小売酒販組合の青年会の副会長をやっていまして、全国規模の青年会にも所属して、いろんな勉強会に参加しています。

東京は有り難いことに山梨に近いし、日本酒だと関東近隣にも蔵元がたくさんありますし、新潟にもわりと近くて、いろんな蔵元さんと仲良くさせてもらっています。

地域活性化のために造ったお酒が「江戸鳥越」。
鳥越神社の千貫神輿にちなんだ、どっしりとした味わい。

特にお薦めの銘柄はありますか?

台東区ならではのブランド「江戸鳥越」

ウチで企画させてもらって、地域の酒販店で売ろうというお酒がありまして、それが「江戸鳥越」っていうお酒なんです。

これは鳥越界隈で「地域活性化のために何か造りたいね」という話があり、毎年1回お酒造りを手伝わせていただいている千葉の『和蔵酒造』さんに「造ってみませんか?」ということで始めたお酒です。

「江戸鳥越」というブランドに関して、こだわっている点はありますか?

鳥越地区はお祭りが盛んで、御神輿が「関東三大神輿」と言われているくらいで、とても重い御神輿なんですね。千貫神輿で4トンくらい。その重さをお酒でも表したいという要望があって「重い酒」にしているんです。重厚感のあるどっしりとしたお酒ですね。

辛口ですけど、米の味もしっかりしているので、激辛ではないですね。うまみもあるけど、どっしりとしている。

他にはどんなお酒がお薦めですか?

純米吟醸酒「江戸」

ウチのオリジナルの「江戸」っていうお酒ですね。今は東村山ですが、もともと神田にあった『豊島屋酒造』というところで、江戸の街にあった酒蔵で「江戸」というお酒を造りたいということでブランド化しました。

実は、その「江戸」の前に、東京小売酒販組合の青年会で「東京」というお酒を造ったんです。フルーティーで、飲みやすくて、お酒に慣れていない方にも自然に日本酒が好きになれるようなお酒を造りたいということで、豊島屋さんに造ってもらいました。しかし、入門酒としての「東京」の次に「江戸鳥越」に行くには、ちょっと間がなさすぎると思ったので、その間が欲しいなということで「東京」を敢えて熟成させて、火入れさせたらどういうお酒ができるかと試してみたところ、すごく辛口でいいお酒になったんです。これを商品化して「江戸」というお酒にさせていただいたんです。

純米吟醸酒「東京」

お客さんにはまず入口として「東京」を飲んでいただいて、そこからちょっとお酒通になったら「江戸」を飲んでいただく。そして、もっと濃いのが飲みたいとなった時に「江戸鳥越」を飲んでいただきたいと思っています。

焼酎でのお薦めはありますか?

焼酎はちょっと難しいですね。鹿児島とか九州が多いので、なかなか足を運べないというのが現実です。ですが、三重に『宮崎本店』という「キンミヤ」を造っている酒蔵があって、そこの焼酎はお薦めかなと思っています。「キンミヤ」はホッピーで割ると美味しいと言われています。甲類焼酎(無色透明のピュアですっきりした味わいが特徴)なんですけど、よく飲みに来ているお客さんは、冗談なのか、本気なのか分かりませんけれど、「これは何杯飲んでも次の日に残らないんだよ」って言っています。甲類の中でも翌日に残らないみたいですね。

平日飲みにはいいですね。ビールはいかがですか?

「TOKYO隅田川ブルーイング」というビールは東京の地ビール第一号なんです。アサヒビールさんが造っています。

ただ、このビールを取り扱えるのは東京で100店舗って決まっていて、それ以上は増やさないという話で、お店を選びに選んで、ウチも何度か断られたんですけど…。「どうしてもやらせてください!」とお願いして、ようやく扱うことができたビールなんです。

それだけ品質にこだわっているんですね。

そうですね。やはり生ビールって、鮮度が命ですからね。それに、洗浄にもこだわっています。

ワインはいかがですか?

日本ワインがお薦めですね。勝沼はもちろん、最近の押しとしては、すぐ近くの台東区の御徒町近辺に『Book Road』というワイナリーが出来たんですが、そこのワインは、個性があって美味しいです。作り手さんも本当にワインが大好きで、その大好きなのが伝わってくるワインの造り方をしているんです。

日本産のワインを中心に豊富なラインナップ

モノマチにも参加して、カバン屋「ガレージ」さんとコラボ。
地域を一緒に盛り上げていきたい。

関さんのご趣味は何ですか?

趣味は仕事です(笑)。やはり、飲むのが好きなんで。自分がこういう店で飲んでみたいなっていうのを、この店で表現したいと思っています。

豊富なおつまみと缶詰類

ご自分の理想をお店で追求しているのですね。ところで、この界隈でお薦めの店とかはありますか?

鳥越神社の目の前に『The Bridge』という立ち飲みスタイルのお店があるのですが、かなり先を行っている店だと思います。ビールやワインが中心で、「ブルックリンラガー」が置いてあったり…。

そこのオーナーさんがアメリカに長く住んでいたらしくて、アメリカンなスタイルなんですが、こだわりのあるオシャレな感じのお店です。出身が栃木らしくて、栃木の地ビールを置いていたり、浅草橋にあるブルワリーのビールも飲めるんです。雰囲気はもう、下町じゃないですけどね。

あと、ウチの店の裏にカバン屋さんの『ガレージ』という店があって、そこが定期的にウチとコラボしてイベントをやっているんです。モノマチ期間中にバッグを買ったお客さんには「センベロチケット」をプレゼントするという企画です。

モノマチで街を歩いてもらって、『ガレージ』でカバンを購入したお客さんに、疲れた体を癒すために一杯飲んで帰ってねという感じでやりました。早い時間帯ではコーヒーも飲めるようにしました。

素敵ですね、そんなコラボ企画。

自分の店だけ売れればいいということじゃなくて、やはり地域で盛り上げていきたいなという思いがあって…。

この「蔵前うしろまえ」でも紹介している『コフィノワ』さんと、フタバさんを紹介して頂いた『ブルーバナナアパートメント』さんもコラボ商品を作っています。

僕もいずれは、もっとこの地域をまとめて何かやりたいなとは思っています。

ウチで働いている子がジャズをやっていて、そのつてで、ギター奏者とアコーディオン奏者を呼んで、店でジャズのライブをやりました。そこに試飲会を交えたらどうだろうということで、まずはお酒の説明をして、飲みながら音楽を聴いてもらうというスタイルだったんですが、けっこう評判よかったですよ。

お酒と音楽って、親和性がありますからね。そういうつながりが、この蔵前でどんどんできたらいいですね。今日は、どうもありがとうございました。


モノマチに参加したり、カバン屋さんとコラボしたり、ジャズライブと試飲会とをジョイントしたり…。はたまたオリジナルのお酒を造ったりと、関さんは自分の店のことだけではなく、蔵前や鳥越という地域の活性化に向けてさまざまな取り組みをされています。

これからさらにどんなことに取り組んでいくのか、とても楽しみです。

角打ちカフェ・フタバ

住所: 〒111-0051東京都台東区蔵前4-37-4 1F
電話: 03-3861-1138
営業時間:【月~土】 10時~21時  日曜休
営業内容:酒類の販売、居酒屋・バー
E-mail:sake.futaba@nifty.com
URL:http://futaba.la.coocan.jp/

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