ビストロ・モンペリエ Bistro Montpellier インタビュー

荒山シェフの料理に対するこだわりと厳しさには、本当の技術を持っている方だからこそ言える強さを感じました。ご友人や地元の方を大切にする人情味あふれる方で、まさに「蔵前の職人」という印象を受けました。お話を伺い(2018年秋)、ますますモンペリエが好きになりました。

 

ジビエの時期ですね。

ジビエは捕ってすぐは新鮮だけど、いつ捕ったかを聞いて、寝かせないと肉が固いし、なじまない。キジと鴨をお見せしますよ。4~5日は吊るしておいて、腸だけ抜いて内臓はそのままにして1週間~10日くらいは大丈夫。次に内臓をとる。内臓と毛をむしるとすぐいかれちゃうから、保護するために一定期間は毛をつけておく。

ジビエは管理が大変ですね。

管理は本当に大事。ハンターが捕ってきてから、一番おいしくなる時期、熟成の感覚を教わったね。死んだ時は筋肉が固いわけ。ある程度すると柔らかくなり、それから熟成させるってことを昔から自然に覚えたと思う。でも今はそういうことをやってないところもあるね。最近は手間を省くために、そういう加工をする工場があるから、自分の個性が出る味にならない。どこで食べても同じ味になる。手間を省く時代になっているからね。

ジビエをさばくところから、すべてシェフがやるんですね。

全てやることで満足感を、そして責任をもてると思う。良い時も悪い時も。70年代、自分がフランス料理を始めた頃は、皆、全部イチからやっていたから。

それはお料理の味に出てきますよね。

個性が出ると思う。できる限りフランス料理のクラシックをやっていきたいと思っている。

私は「おふくろの味」の意味と一緒で、フレンチはシェフの味が基本になっています。なので、他でフレンチを食べたときに感動が薄いんです。

ありがとう。たった一つのものを作るのに時間をかけるわけだから。飲食店は、個性がちゃんと出て、個性を理解できる構造を作らなきゃいけない。

シェフになるのは夢だったんですか?

自分でお店を持ちたかったけど、最初はシェフにはなろうとは思わなかった。大きなところでフランス料理をやっていたから、シェフがいて、二番目の副料理長がいて、肉場があって、魚、スープとかオードブルを作る人がいて、デザートの人がいて、洗い場がいて、分かれている所だったから洗い場から順番に上り詰めて行って、やるだけのことやった。そうすると今度は統括したいっていう夢も出てきた。そうして、自分もやろうかなと思ったよね。統括してメニューを書いてもやっていくうちにやはり自分はその器ではないと思った。小さな店でお客さんの顔をみて反応を見てみたいと思ったのよ。フランス料理で面白かったのは、この料理にはこのワインが合うというのは確かにあるけど、お客さんの飲みたい物、そして食べたい物を合わせられた時が満足できる。だから、自分でお店をやれば周りに感化されずに自分のやりたいことが出来るからいいだろうと思った。それで店を持つことにしたんです。

修業先はアピシウスですよね?

アピシウスの前はレンガ屋です。

そのような有名なお店に入るのも大変では?

そう。大変だったよ。国立競技場の昔ね、その下に東宝パーラーっていうレストランみたいな24時間営業のアイスクリーム屋さんがあって、兄の友だちから、そこでバイトしないかと誘われてバイトをしてた。そこのチーフが、調理師免許を取らせてくれるっていうから取った。そのチーフからハンバーガー屋の店長になるかって聞かれた時に「チーフはどこに行きたかったんですか」って聞いたら、レンガ屋ってとこだった。そこで別の店を紹介するからって言われたけど「いいです、自分で行きます」と言って、電話帳で調べたらレンガ屋って太い文字で書いてあった。で、レンガ屋に「入れてくれ」って電話したら「まず来てくれ」って。それから1週間毎日、「明日も来てくれ、明日も来てくれ」って言われ、最後に土曜日になって「ハイ着替えて!」って言われた。それから1週間はクロークで下足番をやっていた。

1週間過ぎてからボーイさんをやって、それからパントリーをやって、1年やっても調理場に入れないから辞めようかなって思っていたら、レンガ屋は銀座にあったのが二子玉川にできるっていうんで、そっちに呼ばれて、二子玉川のレンガ屋に6年位いたのかな。そしたら潰れちゃったの。12月に潰れて、翌年の4月にアピシウスっていうところがオープンした。そんな時に呼ばれて、アピシウスの立ち上げの時から12年いて、それから自分でお店を出した。だから、修業先はレンガ屋とアピシウスだけだから履歴書を書くときれいだよ(笑)

いろいろなお店にうつる人もいますよね?

いっぱいいたよ。その頃、レンガ屋には料理学校の特待生ばかり入るわけ。1年のうちにみんな辞めちゃう。学校での特待生って優等生じゃん。知識があるからこんなのやるために来たんじゃないとかっていう感じで、どこかから話が来るとそっちに行っちゃう。あれもこれもやって楽しいだろうけど、結局みんなモノにならなくなっちゃう。料理って基礎ができてないと潰しが効かなくなるからね。自分なんかは、調理師学校は出てなく、縁故も一切なかったし、そこで繋がっていただけだから。

仕込み中の荒山シェフ

フレンチって言うと、お祝いとか特別なイメージがあります。でもビストロってつけたということは?

定食屋。うちは飯屋さん。気楽に来て、気楽に食べて帰る。その感覚はなかなかフレンチではないでしょ? うちはそういう感覚でやりたい。

出身は蔵前ですか?

生まれも育ちもそう、蔵前だよ。兄から「両親が年なので面倒見たい。ここを改装する」「おまえも来るか?」って話があり、「だったら1階でやる」って言って、で、ここの店ができる1年前にアピシウスを辞めた。

シェフのご趣味は?

前は映画を観るのが好きだった。チャップリンとか、バスターキートンとかね、昔だよ。今はもう何年も観ていない。昔はスポーツ全般やってた。趣味は人と会うことかな、人と飲んでるのが楽しいからね。

シェフの太い腕はお料理ですか? スポーツですか?

体操をやっていたから。鍛えたっていうか、うちの父も筋肉質だったからね。ホントは器械体操の選手になろうと思ってた。國學院に行った時に、すごい練習が厳しそうで、これはダメだなって。そしたら運がいいのか知らないけど検査受けたら肝臓が良くなかった。飲み過ぎでね。だから体操をやめたの。でも体操はやりたかったな。

お料理の中で何が一番お好きですか? 食べるのと作るのと、それぞれ教えてください。

白米。ご飯の美味しいのが一番。今はほとんど作らないで食べに行っているからなおさらね。どうしても食べに行けないときは、サンドイッチ買ってきたり。けどやっぱり白米が美味しい。日本人だからかな?

お米のこだわりはありますか?

いろいろあるけど、コシヒカリが美味しかったな。先輩が新潟で、そこで食ったのがやっぱり美味しかったな。ご飯だけで食べられた。それからだね、白米が好きなの。

ランチの時に少しご飯が添えてありますよね。あれがスゴく美味しいです。

あれはピラフね。鍋にバターが入ってるでしょ、ローリエとセロリを入れて、そこに米をいれてバターを浸透させる。炊くことをピラフ。

うちは最初の頃はピラフじゃなかったけど、ランチでお客さんからご飯を食べたいって言われて、ピラフにした。そうしたらこれが受けてね。やはり日本人は米なんだと思いました。

プライベートではどんなお料理を作りますか? 愛用の調理器具はありますか?

愛用の器具はないね。包丁くらいかな。包丁があれば何でもできる。どんな料理って、今は作らないな。人の家に集まったときは何か作ってる。楽しいし、答えが返ってくるし。

いいですねぇ、集まりたい。お店と家庭のキッチンは使い勝手が違いますよね?

全然問題ない。家庭は火力が弱いでしょ。火力が強くなるのを待てばいい。フライパンでやったって、みんな火力が弱いって言うでしょ。だからフライパンが温まるまで待てば良い。みんな分量どおりにお湯の中にズボッて入れたら、温度が下がっちゃうでしょ。このぐらいだったら、このぐらい入れればいいって、入れる量も考えながらやればできる。

コックさんのお友だちが多い?

そうだね。僕くらいの年になると、もうみんなそれなりの地位になっているからね。セカンドライフじゃないけど、ゆっくりしたい人ばかりでいっぱい昔の話をするのが楽しいから、そういうところには行っているね。

モンペリエっていうのは地名ですか?

地名。フランスの南、南仏。私じゃないお世話になった偉大なシェフが「モンペリエ」が良いって言ってね。ホントは自分で決めてたんだけどね、却下された。笑っちゃうでしょ。でも偉大なシェフに言われたから「モンペリエ」にしたんだよね。

シェフの渾身の一品は?

パテだね。全般的にパテが好きだし。フランス料理って言ったらパテかな。バケットとパテとワイン飲んで、それで充分。発酵食品だから日本で言うと、鮒寿司みたいなイメージ。

絶品のパテとホタテのテリーヌ

テリーヌとパテって違うのですか?

パテって中のネタのことをパテって言うの。中に入ってるもの、ハンバーグもパテって言うから。テリーヌは入れ物。四角いプランターがあるでしょ。あの枠のことをテリーヌって言う。(ちなみにカヌレは、あの型をカヌレっていうの。そこにネタを入れて焼いたのがカヌレ。テリーヌと一緒と言えるかな。プリンのネタをカヌレに入れたらカヌレっていうボルドーで有名な菓子になるのよ。日本でも最近は知られているんじゃないかな。)

シェフが美味しいと思うお店は?

友だちのお店で『モナリザ』というところで、恵比寿と丸ビルの36階にある。蔵前の『柊』という定食屋さんもいいよ。ママが先輩なんだ。


明るく気さくな荒山シェフがつくる本物のフレンチを気張らずにいただく。この満足感を多くの方に味わっていただきたいと思います。貸切になることも多いので、遠くからお越しになる場合は事前に確認されることをおススメします。

ビストロ・モンペリエ

住所:東京都台東区蔵前3-16-7
電話: 03-3864-1611

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