東京ひかりゲストハウスさんにインタビュー

第2回目は、外国人旅行客に人気のゲストハウス『東京ひかりゲストハウス』さんです。築70年程の木造家屋をご自身たちで改築し、2014年にオープン。かわいい家具や小物にあふれ、優しい雰囲気に満ちた居心地の良いゲストハウスです。家族経営されている兼岩さんご夫妻に、お話しをうかがってきました!
東京ひかりゲストハウスのネーミングの由来を教えてください
イサさん:「ひかり」にお客さんが集まってくるイメージです。そういうものに私たちがなりたいって、二人で決めました。

オーナー 兼岩 勲さん・夕美子さん ご夫妻
海外に30カ国程行かれているそうですね
イサさん:お互い旅行が好きで。で、旅行先で知り合って結婚しました。
素敵ですね。出会いはどこの国で?
ゆみこさん:タイです。ベトナムに行く飛行機の空港のカウンターですね。
それぞれが一人旅だったのですか?
夫妻:そうですね。
ゲストハウスを始めたきっかけを教えてください

客室のベットもゆみこさんの手作りです
イサさん:結婚して築地の卸売会社で働いていた頃、サーフィンを好きになって毎週行っていたら、世界中でサーフィンをしたくなって旅行するために辞めました。で、世界中を旅行して帰ってきて、さあ何やろうかって思った時に、日本に安い宿泊施設があんまりなかったので、あればいいな、自分たちでゲストハウスができたらいいな、と思ったのがきっかけになっています。
サーフィンをするための旅行は、奥様もご一緒に?
ゆみこさん:そうですね。一番上の子が3歳だったんですけど、連れて3人で。
小さいお子さんがいて、心配はありませんでしたか?
ゆみこさん:若くして結婚したので、不完全燃焼だったんです。一人の旅行は一番長くて8ヶ月のアジアだったし。まだ全部を周って無かったから、ずーっと行きたい行きたいって思いながら子育てしていて、それで行ったので。子供の心配はマラリアとかあれなんで、アフリカとかはやめておこうかみたいな。さすがに病気は恐いのでそれだけですかね。子供を連れていると格段に犯罪に遭う率が低くなるんで。むこうもやっぱり人の子ですね。悪いなって思うんでしょうね。
仕事も辞められて行かれたんですよね。帰ってきてからの不安はなかったですか?
イサさん:旅行中は不安はないんですけど、日本に帰ってきてからですね。まわりの人は普通に働いていて、自分は子供いて女房いて収入はゼロで、かなり不安になりましたね。働かなきゃと思って、あまり考えずにゲストハウスやろうって、パーっと動いたんです。でも資金がないから、まずお金稼ごうと思って。ある宅配寿司屋の「年収5千万稼げる」っていうキャッチコピーに惹かれてそこに就職しました(笑)
ゆみこさん:全然5千万にならなかったけどね(笑)
行動力が凄いですよね。
イサさん:働くとやっぱり働くのが中心になるので、ゲストハウスをやりたいという思いがありながら、なかなか動けない状態が長く続いていたんです。結局は妻が業を煮やして、「やりたい、やりたいって言ってるけど全然動かないじゃないの、私が探してくる!」って。そこからまた動き出しましたね。
ゆみこさん:物件探しなど、オープンまでの事はほぼ私が。夫には主夫をしてもらってました。
蔵前を選んだ理由はありますか? ご出身がこの辺りとか?
ゆみこさん:物件自体が少ないので、出たら見に行って気に入るかどうか。でも浅草辺りがいいだろうなとは思っていたのと、値段との兼ね合いで。東京の西の方は高いじゃないですか。こっちの方が安いっていうのと最終的には・・・勘なんですけど、街の感じ、雰囲気が良い感じだったかな。すみません、ふんわりしてて。出身は千葉県なんです。家族で月島に住んでいたので、月島でと思ってたんですけど、高いわりに昔の建物がそんなに良くなくて。下町の中でこの辺は問屋街でお金を持ってる方が多かったのか、古いお家がお金を掛けてあって立派なんですよね。しっかりしてる。
イサさん:一般的な建物の価値はゼロでも私たちから見たら価値がある、という古い物件を探したので。なかなか難しいですよね。
内装など、とても可愛いいですね。こだわった部分など教えてください
ゆみこさん:今の内装屋さんとかって隠しちゃうんですよね、全部。せっかく古いお家なのに柱とか隠すように構造を作るんですね。「えーこんな立派な柱を中に入れて隠しちゃうの?」と思って、それを出すようにしたところですかね。あと、デザインするにあたって、いろんな人に来て欲しいなと思って「混ざる」というのを考えていました。古いお家でも清潔に過ごせるように、思い切って新しくするところは全部新しくする。で、老若男女混ざるというイメージで作ったのと、東西どっちともつかないように、和風ってしないように、かといって西洋風にし過ぎないように混ぜたっていうところですかね。
本当にどこを見ても素敵です。デザインは奥様が?
ゆみこさん:そうですね、作りながらですね。自宅はこうじゃないんですけどね。仕事だと思うとできるもので。家はどうでもいい感じ、ダンボールでいいみたいな(笑)

懐かしい雰囲気で家具や小物も可愛い!土間の共有スペース
設備も雰囲気も評価がとても高いですね。雰囲気を良くしようと常に意識されているのですか?
イサさん:結果的にそういう風になるようにしてないといけないかな。私たち受け入れる側が元気というか気力があるというか、それは気をつけています。二人が喧嘩してたらダメだし、落ち着いて精神状態を保つようにしてますね。
実際、夫婦喧嘩は?
イサさん:よくしていますね。
ゆみこさん:お客さんが来ると笑顔つくって、いらっしゃいませーと。
イサさん:なので、お客さんが来ると止まるので、ありがたいっていうか(笑)
お客様の年齢層や、海外の方の割合はどうですか?

2階は男女混合相部屋と個室づかいのお部屋
イサさん:8割以上が20代から30代前半の方。
7割ぐらいが海外の方。季節によっても変わるんですけど、年間通してそれくらいですね。
オリンピック開催が決まってから宿泊者も増えていますか?
ゆみこさん:いや、こういうタイプの宿が増えましたし。来日の外国人の7%程度がこういったタイプのホステルやゲストハウスに泊まるので、ニッチなところをみんなで取り合っている感じなんですよ。
海外の方が多いと使い方が日本の方とは違ったりしますか?
イサさん:まあ違うんですけど、みんなうまくやってますね。あ、スリッパとかは難しいみたいで。ここは土間だから普通そのまま入っていきますよね。でも気を使って脱いじゃう人が最初いてね。「ここで脱ぐの?」みたいな。逆にサンダルのまま部屋にあがったり。でもそれは最初から許容範囲内というかね(笑)
リピーターの方が多いですか?
イサさん:そうですね。いまの方(インタビュー中にチェックインした方)も2人ともそうですね。
ゆみこさん:リピーターが来るとうれしい。お互いわかってるし。ここにいるのを楽しんでるだけの人もいます。今日来てる台湾の男の子もそうなんですけど、あんまり構うと嫌なんだよね。台湾から年3回くらい来てくれて、何するわけでもなく部屋で音楽を聴いてたり。
印象深かったお客様はいますか?
ゆみこさん:面白かったのが、中国の女性が冬季オリンピックの時にいらっしゃって「テレビ観たい」と。ご要望があれば持ってくるんですけど、「テレビが無いからキャンセルしたい」ってここで駄々こねて。「当日だからキャンセル料100%いただきます」って言うと、「じゃあ、やっぱり泊まる」と。結局はここで毎日他のお客さんと観てました。フィギュアスケートにすごく詳しくて、色々教えてくれるんですよ。結局みんなで一緒に楽しく過ごしました。だから最近は、最初からクレームを付けてくる人は絶対いい人だ!と思って接するようにしてますね。
イサさん:あと、カナダの30歳くらいの男の子なんですけど、レイキをやっていて。そういう人が比較的集まるんですよ。
ゆみこさん:スピリチュアル系の人が多いんですよ。うち特有なのかな?
癒される感とか、わかる気がします。
イサさん:シャンプーとかは自然系のを使ったり、洗剤も石鹸系を使ったりとか、食事も気をつけたり、そういうのが伝わってるのかなと。

キッチンや冷蔵庫など、フリーで使える設備もそろっています
今後イベントなど、やりたいことはありますか?
イサさん:私、山とか好きなので一緒に山登りとか。
ゆみこさん:まじですか?? どうぞ(笑)
山も海も、ご主人アクティブですね。サーフィンをやっているとき、心配はありませんでしたか?
ゆみこさん:心配より、「海外で働きたい」とか言っていたから「仕事探せよー」って思っていましたね。海外にいるんだから。「仕事探さないの?」って聞くと、「やっぱり日本で働きたい」って言うから、そうなんだぁと思って。日本に帰ったら「また海外で働きたいから寿司屋」とか言い出して。どういうつもりだったのか聞きたいですけど。
どういうつもりだったんでしょう? いま聞くチャンスですね(笑)
イサさん:イメージですよね。そういう選択肢もあるかなと。可能性として。
ゆみこさん:やりたいことがあるならチャレンジすれば良いって思っているから、私、助けちゃうんですよね。止めたりしたことないよね? 本人の意思があるなら貧乏していても良いと思っているし。お金とかよりもやる気があって輝いてくれている方が良いと思っているので。でも言ったことと違うし、だんだんあれ?おかしいなってなってきて。「わかりました、私がゲストハウスをオープンします」って言ってやったんです。
蔵前でのお気に入りの場所や、オススメのスポットを教えてください
ゆみこさん:有名どころだと『カキモリ』さんとか『コンセント』さんとかもオススメだし。とんかつの『スギタ』さんや、天ぷらの『ミヤコシ』さんとか。
イサさん:俺は寝かせ玄米の『結わえる』も好きだよ。
ゆみこさん: あとどこだろう。イタリアンの『ゴローゾ』さんとか好きだけど。あと『コントワールクアン』さん。もと国語の先生で、料理好きが高じて開いたって。あと、床屋さんの『HANARE』さん。いつも男性が一人でいて、カットしかやらないんですよ。パーマとか染めとかシャンプーもなく、予約も受け付けないので、店長の趣味なのかな? そこが最近のオススメです。
影響を受けた人がいたら教えてください
ゆみこさん:もう亡くなった方ですが、自然療法の先生が後押ししてくれて、主人と2000年頃に「ゲストハウスをやりたいんです」と相談に行ったときに、「いいね、いいね!」とすごく賛成してくれたので心を決めた、というのはずっと忘れずにありました。その方が「ひかりは人が集まるから」と言ってくれて、その方の影響はあります。 建物とか営業関係でいうと、バンコクのブッティクホテルみたいな『Phranakorn-Nornlen』さんに影響を受けていますね。ここが好きでヘビーリピートしていて。内装とかも、かなり真似しています。朝はオーガニックのご飯だったり、ベビーカー置き場もあるし、子供が遊ぶおもちゃもあったり、家族ウエルカムなんですよ。そういう風にしたいと思っています。
将来の夢などありますか?
ゆみこさん:よく聞かれるんですけどね、オープンだけで精一杯で。どうかなぁ、長く続けたいなとは思っていますね。ゲストハウスオープンブームの同じ頃にオープンしたところも多くて、「飽きちゃったから辞める」というところも出てきたんです。それは悲しくて。リピーターで来てくれる方もいるし、私が行っているバンコクのそこもなくなったら悲しいし。行ったときに質が下がっていたら悲しいので、期待するところをキープしたい。細く長く続けること、年を重ねていくことを大事にしていきたいなと思っています。日々淡々でもクオリティーをキープしたい。いまは掃除を一生懸命やっています。
イサさん:自然体でやっていきたいと思っています。夢というか、泊まった人がゆっくり満足して、寛いで帰っていただけることを積み重ねていきたいと思っていますね。
山小屋を作りたいとかは?
ゆみこさん:いいですね、もともと人当たりだけは良いので、この人に合う仕事は何かなぁと考えたらゲストハウスの親父はどうだ!と思って。でも山が好きだから山小屋だったらもっといいなと思っていて。おしゃれな山小屋もいいよね。
イサさん:山が好きなので、よく山の話をするんですが、フランスとかドイツとかには綺麗な山小屋があるんです。もし日本の山小屋が遅れているのであれば、需要もあるのかなって思ったりもします。父が山が好きで、小さいころ連れられて弟と文句も言わずに山に登っていました。なんとなく楽しかった。まさか自分が大学(信州大学)で山岳部に入るとは思っていませんでした。冬山やネパールも行きましたよ。
山岳部からサーフィンですもんね?
イサさん:アウトドアとういう切り口で考えると近いものがあります。フリークライミングをやっている人たちとサーファーの感覚は似ている部分があって、ファッション性や競技性、やっていることは自然相手で天候をみたりとか、なんとなく似てるなと。
ここの天井の高さ(4m)を利用して、壁をボルタリングにどうですか?
イサさん:私も思ったけど、すぐ却下されました(笑) 今すごい人気がでてきてますけど、マイナースポーツだったんですよね。それがいつのまにかオリンピック種目になって、サーフィンもオリンピック種目になりましたよね。
ゆみこさん:「俺のおかげじゃない?」と思ってるの?(笑)
イサさん:だからサーフィンやってボルダリングやって山登って、複合種目があればいいですね。
ゆみこさん:何言ってんの!? すいません、オチが。。。。(笑)
「ひかり」そのもののような明るくてあたたかい素敵なご夫婦で、和やかに気持ち良くお話をうかがうことができました。自然体で接してくださるので、親友のお家にきたような気分で宿泊できると思いました。蔵前を散歩してお店やカフェを楽しんだあと、泊まりに行きたいですね!充実した休日を過ごせそうです!
東京ひかりゲストハウス
住所: 東京都台東区蔵前2-1-29
電話: 03-5829-4694
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