コフィノワ COFFEE NOVA スペシャルインタビュー【後編】

蔵前のコーヒーショップ「コフィノワ」オーナー高橋史郎さんのスペシャルインタビュー後編です。
前編「コフィノワ オープンへの道のり」では、高橋さんの学生時代のお話からコーヒーショップをオープンするきっかけ、そしてお店のこだわりをお話して下さいました。
後編「スペシャルティコーヒーの魅力」では、お店で焙煎している豆の秘密やスペシャルティコーヒーのお話をして下さいます。
「スペシャルティコーヒーって何だろう?」「コーヒーの焙煎って?」
今まで知らなかったコーヒーの世界へ一歩近づいてみましょう!


「どのドリップ方法でも美味しい」ということを体現したい。

ドリップの方法にこだわりはありますか。

ウォータードリップマシン

ネルドリップとサイフォンだけは一杯淹れるのにすごく時間がかかってしまうので、 やっていません(コフィノワさんの抽出方法は、エスプレッソマシン、ペーパードリップ、フレンチプレス、エアロプレス、ウォータードリップ)。 この二つは、カウンターで所作を見ながら楽しみますが、うちは客席が離れているのと、コーヒー豆の引き売りがメインなので。
どうドリップすれば美味しいのか…いや「どのドリップ方法でも美味しい」ということを体現したい。お客様にプレゼンテーションしたいんです。
実は、提供はしてはいないのですが、ネルドリップは試してはいます。なんでもやってみたいんです。

一番お好きなコーヒーは何ですか?

日によって違いますね。コーヒーというのはすごくライブ感が強いので、同じコーヒーでも 昨日と今日では味が違うんです。 今日はこれがいいぞ、というのと、気分が一番合致したものがベストに美味しいと感じるんです。
レジの横にある、小さいブラックボードに書き出している「今日のリコメンド(おすすめ)」は毎日変わります。これは在庫を調整するためではないんです。今日一番美味しいコーヒーを書き出しています。
これはお寿司屋さんで板さんに頼む「おまかせ」と同じで、一番美味しいネタを出してもらうのと同じなんです。「大将、今の季節はこの魚が美味しいんだよね!」と注文するより「今日の一番のおすすめで!」が一番美味しいんです。

毎日変わる「本日のおすすめ」

湿度や気温、季節、焙煎の具合、日によって味は変わってしまうものですか?

店内で焙煎をします。 使わないときには客席に早変わり。

先ほど言った「コーヒーのライブ感」と同じなのですが、いつ焙煎されてどのくらい時間が経っているのか。寝かした日数によってそれぞれ違うんです。
例えば、焙煎したての深煎りの豆は味が軽いんです。どしっとした重厚さが足りない。コクはあるけど薄いというか、つまらない。ある程度寝かせないと重厚な風味が出来てきません。だから、こういう豆はおすすめに入れてません。
リコメンドでは「深煎り」「中煎り」「浅煎り」のスリーバンド(3種類)のおすすめをしています。
深煎りの苦い味が好きというお客様に、酸っぱいコーヒーをおすすめはできないですよね。だからそれぞれの嗜好に合わせたスリーバンドの「今日のおすすめ」があるんです。焙煎というのは香り…フレーバーだけではないんです。味わい、甘さとかそのコーヒーの特徴が一番出る焙煎というのを常に心がけています。
浅すぎると味が出ない、逆に深煎りにしてしまったが故に、フルーティーな香りが飛んでしまうことあります。味はもちろんグッと出てくるんですけど。浅煎りの方が、色々な味が分かりやすい豆もあります。ですから、その豆の味を引き出す焙煎をします。
例えば、本日のおすすめの中煎りのグアテマラは、浅煎りにすると酸味が主体すぎて味が取れず、酸っぱいだけのコーヒーになってしまう。逆に深煎り過ぎるとフレーバーが飛んでしまう。だから中煎りがベストなんです。

豆によって使えるバンド(帯域)が違うんですね。

そうですね。僕はあまりそうは思わないのですが、結構万能に使えると言われているのはケニアです。うちのように浅煎りにしているところもあれば、黒光りするほど深い煎りにしているところもあります。
焙煎するときは大体、1.3~1.7kg程焙煎するのですが、初めて入荷した焙煎経験のない豆は「確実に失敗する」と分かっていながら焙煎します。印刷でいう「試し刷り」です。その味を見て、今後の焙煎に役立て調整していきます。試行錯誤、トライ&エラーですね。

一回で焙煎が上手くいったことはありますか?

同じ原産豆だと、過去データから似たような焙煎時間を設定したりたりします。コンスタントに同じ味を引き出せるように、同じ豆でも少しずつ焙煎を変えていきます。
ところで、実際にどういうものがうちのコーヒーなのか召し上がって下さい。
紺のカップが中煎りのグアテマラです。赤のカップが浅煎りのエチオピアです。味がソフトな浅煎りエチオピアの方がら飲まれた方が判りやすいかもしれません。

赤:浅煎りのエチオピア  紺:中煎りのグアテマラ

ドリップしたコーヒーの色も違いますね。浅煎りエチオピアの方が若干色が薄めです。…美味しいです!……あ、酸味がすごくきます。

酸味だけではなく、口に広がる香りは深煎りにはないものです。深煎りにすると香りが無くなってしまうんです。なので、あえて深く煎らない。ふわっとした豊かな香りを楽しんでもらうために、浅煎りのままにするんです。
日本人の方は、酸味が強いコーヒーに抵抗を感じる方が多いんですね。こちらはエチオピアのモカなんですが、アフリカのコーヒーは少し浅煎りにしています。

後味がとても残ります。

味というより、いわゆるこれがフレーバーなんです。口の中にふわっと残る。フレーバーの強さは浅煎りの方が強く感じます。味自体がそこまで強くないので、香りの成分の方が強く感じるのです。

浅煎りエチオピアは、レモンが入っていると思えるくらいのさわやかな酸味を感じます。
次は中煎りのグアテマラを飲んでみます。

最後の方にチョコレートの様な甘さが出てくるはずです。
もう少しコーヒーが冷めてくると、出てくる味があります。冷めてからもう一度飲んでみて下さい。

確かにカカオっぽい風味の余韻を感じます!

香りも「ザ・コーヒー」という香りではない。味の中のフレーバーが強いので、定番から逸脱しているコーヒーなんです。イメージできるコーヒーの味ではないんです。フレーバーがすごく独特で、その土壌や気候由来の香味成分が表現されている。
この特徴を点数として加減していくのです。減点である「妙な嫌な味」が見当たらない場合、「さわやかさ」や「酸味」は加点されていくのです。こういった特徴を持ったコーヒーが「スペシャルティコーヒー」と呼ばれるコーヒーなんです。

豆の特徴を参考に選べます

普通のコーヒーのカテゴリに収まらない、特殊なカテゴリにあるコーヒーのことを「スペシャルティコーヒー」と言うのですね。

エチオピアの豆の中でも、もう少し水っぽくて、そんなに味は強くないけれども酸味もないし、なんだかふわっとした味。それは「ザ・モカ」であってスペシャルティコーヒーではないんです。
こういった、コーヒーの味の特徴の尺度をトレーニングして、身体に叩き込んで身に付けてテストに合格すると「Qグレーダー」になれるんです。この資格は3年おきに更新テストがあるんですが、実は10月にあるんです。体調によっても味が変わりますから、風邪をひいてしまうと大変なんです。

「なぜ美味しいのかわからないけれども、美味しい!」と言われるコーヒーを出していきたい。

豆の煎り方によって、このような味を引き出せるとは衝撃的です。
…中煎りのグアテマラが冷めてきたので味をみてみます。

独特な香り…ちょっと香草の様な香りが出てくるんです。そして酸味は浅煎りエチオピアよりもずっと出てきます。刺すような酸味なんです。これが温度が高いときには、ほろ苦いカカオの味や色んな味が主張しているので、酸味は隠れてしまっているんです。

冷めた中煎りのグアテマラはとても酸味が強くなっています!温度が変わっただけで味が全く変わってしまいました。これは面白いですね!
熱いうちに一気に飲んでしまうとこれは楽しめませんね。

最初はちょっと分かりづらくなかったですか?これがバリスタさんやコーヒー関係に勤めていらっしゃる方は「おっ!これはいい!」とすぐに解かってくれます。普通のグアテマラじゃないな、と。温度帯で飲み比べてみると、味がどんどん変わっていくんです。浅煎りエチオピアの方は、最初からレモンっぽいフレーバーで判りやすい。
このエチオピアの豆は「ウォッシュト」という、赤いコーヒーの実から果肉を除去して、洗ってから乾燥させて脱殻するというプロセスで作られています。
もう一種類の別のプロセスで作った、同じ浅煎りエチオピアコーヒーをお出しします。

……!これは普通のコーヒーのフレーバーではないですね。とてもユニークなコーヒーです。美味しい!

コーヒーの実をドライフルーツにする方法です。果肉をつけたまま乾燥させるので、果肉の甘さが豆に移ってくる。その香りが出てきているんです。フルーツ感があります。ブルーベリーっぽいんです。

浅煎りなのに赤ワインの様な濃厚さです。とても味わい深いです。

煎り方、淹れ方だけではこの味わいは出ないんです。手塩にかけて育てた豆が無ければこの味にはならないんです。
安い人件費の農園では、赤い実も青い実も一緒に摘み取ってしまいます。そうではなく、赤い実だけが入った豆をコフィノワは使うんです。もちろん人件費が高くなる分、買う時の豆の価格は全然違います。
コーヒーを生産する国は、どちらかというと貧困な国が多いんです。けれど、質の良い豆が高く売れれば、そのお金が労働者に渡ります。そのお金で子供たちが教育を受けられる、農園自体が学校を経営するといった事もあります。
自分たちは良い豆を手に入れて美味しいコーヒーを作れる。労働者の方たちは生活が潤う。良い循環が生まれます。
グッドインサイドやフェアトレードというものもありますが、それはやりません。なぜならまだ発展途上で良い循環が足りない気がします。それらは、決められた利率のバックを受けるというシステムなんです。これでは飛躍的に美味しいコーヒーを継続的に作るのは難しい。
そうではなく、確実に美味しいと評判の豆がオークションに出される。世界中から引き合いがあり、正当な評価を受けているので、価格もそれなりに高価になるのです。通常の価格の4、5倍します。そういった豆を使っています。
「なぜ美味しいのかわからないけれども、美味しい!」と言われるコーヒーを出していきたい。
これは「コフィノワ(コーヒーノヴァ)」の名前の由来でもあるんです。このコンセプトだけは崩せない。色んな意味が掛け合わさっています。

お手軽なのに美味しいと評判のドリップパック。オリジナルパッケージでも作れちゃいます!

「スペシャルティコーヒー」の本当の意味が、初めて分かりました。

「スペシャルティコーヒーって何だろう?」って思う方が殆どかと思います。うちは、それぞれの豆の最大値の特徴を引き出す焙煎をすることがモットーなんです。
豆の産地が明確で、農園主が誰かということが分かれば「スペシャルティコーヒー」と名乗っているところもあります。そうではなくて、コーヒーをカップリングジャッジで正当に評価出来る点数を付けられる豆が「スペシャルティコーヒー」とコフィノワは考えています。
質の高い豆という理由だけではなく、カッピングサンプル(挽いたコーヒー豆を入れたカップにお湯を注ぎ、判定する)で選ぶ際、特徴の強いものや印象的なフレーバーを持っていて「これは面白い」といった豆を集めているんです。
コーヒーを飲まれたお客様がびっくりする「わぁ、何これ!」「初めて飲んだけれど美味しいね」という感想が出れば一番嬉しいです。
お客様にワクワクしてもらえるコーヒーを、僕はワクワクしながら探し求めているんです。

これだけの個性が光るコーヒーは初めて飲みました。コーヒーの概念が全く変わりました。これが「スペシャルティコーヒー」なのですね。
そういえば、お店のロゴの「コフィノワ」の「コフ」の部分がコーヒーカップになっているんですね。

なかなか気づいてくださる方はいないんですけどね(笑)


終始、コーヒーへのこだわりを熱っぽく語って下さった高橋さん。コーヒーに対する真摯な姿がとても印象的でした。
豆の選別から焙煎、ドリップの各々にこだわったスペシャルティコーヒー。中煎りのグアテマラコーヒーの味が、冷めると全く別の味に変わってしまったのにはとても驚かされました。
気になった方はぜひ、コフィノワさんの「スペシャルティコーヒー」を試してみてはいかがでしょうか? コーヒーの新しい世界が広がるはずです!

 

コフィノワ COFFEE NOVA

住所: 東京都台東区蔵前3-20-5
営業時間:[月火水金]8:30~18:00  [土日祝]11:00~18:00
電話: 03-5823-4445

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